福島原発事故とトロッコ問題

1.宮台真司さんのTweetの中に、
今回の福島原発事故と前線で命をはっている作業員さんたちの関係について、
「いままさにトロッコ問題の具体的状況に置かれています。」
という言葉があって、考えこんでしまった。

(Wiki)トロッコ問題とは

これの類似問題は去年大ブームとなったマイケル・サンデル教授のハーバード白熱教室でも、
いくつかのバリエーションで問われていた。
ざっくり言うと「たくさんの人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるのか?」
という問いだ。
この問題は、戦時下日本の「特攻隊」の話とも共通する。

 

「犠牲心」を賛美するというのは、「特攻隊賛美」と同じような心理であり、
それはもちろん僕の心の中にもあって、
それはそういう方々に対する「感謝」と「畏敬」の念なのだが、
「特攻隊」という過去の痛みを継承している今の僕たちが、
現在、犠牲心のみで現場で頑張っている方々に対して「感謝」や「尊敬」だけで済ませてしまっていいのか?
ただの「ヒーロー賛美」だけに終わっちゃいかんだろ、と思う。

「特攻隊」の無償の死は、「靖国で会おう」という
当時の宗教的共同主観性(吉本隆明用語なら「共同幻想」)の元に、
共有された価値観・倫理観の中でだけ正当化されたものだった。
「特攻隊」の犠牲に僕らの世代が報いることは、靖国に祀られている方々に、
民族的な責任感として、当時の宗教的共同主観性に基づき、
今も祈りを捧げるという行為によってしか全うできないような気がする。
そして同時に「特攻」による犠牲者を出さないように国家への監視をしなければならない。

しかし「靖国参拝」は戦後ずっと、左翼と左翼系マスコミに非難され続けてきた。
yasukuni-bas

 

2.ガジェット通信記事に今回の現場で働いている恋人を持つ東電女社員の方の話があって、
数日前、意見欄に僕も投稿した。

ガジェット通信記事へのリンク

この記事に対するTweetは3800以上あって、全部を読んだわけじゃないが9割がたが
「応援します。頑張れ。」「批判しても解決しない。褒めてがんばってもらったほうがいいと思う。 」
という論調だ。

応援だけとか褒めるだけとか、感情的な同情や感傷は、
戦時下に僕らの祖父祖母世代が「特攻隊」を支持した心情とよく似ているのではないかと思えてきて
釈然としない。
国民のために犠牲になるということの背中を押しているようで、どうにも気分がよくない。

今現場で頑張っている方々にもしものことがあったとしても「神」として祀られることすらないのだ。

この60年間あまり「特攻隊」を送り出した政治体制や靖国参拝大批判を続けてきた日本の左翼系大マスコミは、
今回現政権と東電上層部が現場に押し付けた「犠牲心」についての批判は、いっさいしていない。
「国家」と「それを守る犠牲心」という同じ根っこの問題だというのに、
なんたるダブル・スタンダードであることよ。

 

trolley-problem

アメリカ・メディアが今回の現場作業員50人を賞賛しているというNHK報道もあった。
もちろん現場は最大限に賞賛されるべきだ。
しかし冷静な外国メディアでは、国が現場に押し付けた「犠牲心」についての批判が出ている。
フランスで最も長い歴史を持つ日刊紙「フィガロ」のサイトでは、
今回のこの事態を「カミカゼの犠牲」と批判している。

(フィガロ記事へのリンク)Japon:les kamikazes du nucléaire sacrifient leur vie

重要点を書くと、
世界一の原発大国であるフランスには、こういう原子力発電所事故に際しての
何百人ものエキスパート集団ががいて、いろいろな保証もされている。
彼らは、今回の日本のケースのような犠牲的ハリウッド型スーパーヒーローなどではない。
日本では今回の件に際し保証すらされていないようだ。
ということだ。

今回のトロッコ問題の解決方法だが、
現在の多様化した価値観の中では、
福島の現場の方々に報いるには、それに見合うだけの「報酬」しかないと思う。
褒めるより賛美するよりなにより「報酬」で報いるべきではないか。
国と東電は、ひとりひとりに高額の臨時報酬」の約束をするべきだろう。

 

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工藤ゴウ(KUDO GO)宮崎県西都市、西南戦争で西郷隆盛が泊まった旅籠屋跡の古い日本家屋で生まれ、以降延岡育ち。 上京後、現在は東京と宮崎市に拠点。 音楽データサービス、WEBデザイン等デジタルコンテンツ制作の仕事を、かれこれ20年以上続けています。

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