オリコンデイリーチャート3日連続一位です。
BUMP OF CHICKENは去年末ぐらいから、
ハイペースでシングルをリリースし続けていますが、
そのすべての作品がハイクオリティで、今回のシングルも実に素晴らしいです。
これらの作品に襟を正して向かい合おうと思います。
「宇宙飛行士への手紙」は4つ打ちバスドラの上に乗った
ミディアムテンポのロックナンバーで、
それはプロデューサーからの注文だったそうですが、
その注文どおり踊れる曲に仕上がっています。
シンプルそうに聞こえますが、シンセパッドでテンションを入れたりして、コードはところどころ
かなり複雑な響きになっていますね。
PVを見ると、これは「天体観測」のアンサーソングなのでしょうか?
9年前に『今というホウキ星』を懸命に探していた「天体観測」の主人公は、
宇宙飛行士になったのか?
そういう想像と幸福感を、受け手側に与えてくれます。
それにしてもなんと美しい詩なのでしょう。
僕が2010年に目にしたすべての歌詞や詩の中で、比べるものの無いもっとも美しい詩です。
詩の隅々に散りばめられた宝石のようなメタファーに、
藤原基央の、2000年代日本を代表する詩人としてのプライドを感じますね。
「匂いもカラーで思い出せる 今が未来だった頃の事」
「蜘蛛の巣みたいな稲妻が 空を粉々に砕いて消えた」
「ひっくり返した砂時計 同じ砂が刻む違う2分」
「お揃いの記憶を集めよう」
「笑い合った 過去がずっと 未来まで守ってくれるから」
どの表現をとっても、
真剣に言葉と格闘している者にしか生み出せない、鮮やかなフレーズです。
そしてこれらの言葉は、
「そしていつか星になって また一人になるから 」という無常観と、
「全てはかけがえのないもの 言葉でしか知らなかった事」という、
自分が生きてきた時間、自分が今生きている時間への強い肯定感に結実していきます。
藤原基央は「愛」や「恋」という単語を安易に使いません。
そういう普遍化された単語で限定されるイメージでなく、
自分が紡ぎ出した言葉によって、喚起されるイメージや、
シチュエーションや、想いを受け手と共有したいと考えているからなのでしょう。
たとえばあなたが高校生だった15歳の頃に、
手も握れずに憧れていたクラブの先輩を思う「恋」の感情と、
20代後半になって、この人といっしょに人生を過ごそうと決めた時の「恋」の感情とは、
別のものでしょう?
それを同じ「恋」という言葉にしたら、
その瞬間に切り捨てられてしまう「感情」があるわけですよね。
「モーターサイクル」は、最初どこが頭なのかわからず、
普通はこういうアップテンポの曲はドラムが入ってきたら、どこが頭かはっきりわかるのですけれど、
バックビートの2拍4拍にわざとスネアを置いていないパターンで、
なおいっそう聞き手が混乱します。
他ではほとんど聞いたことのないようなすごく複雑なリズムのマジックのあるの曲で、
こういう曲が単体で(今回は両A面扱いだが)、チャート1位になるような日が来ると
日本のPOP音楽はきっと変わるだろうなあ(もちろんいい方向に)。
「宇宙飛行士への手紙」がシンプルなリズムの曲だったので、
こちらでは思い切って冒険したのだと思いますが、
世界中のバンドマン達が「えっ?何これ?」って驚くようなリズムですね。
BUMP OF CHICKEN『モーターサイクル』