だれも知らない小さな国とアリエッティ

「だれも知らない小さな国」から始まる、佐藤さとるの「コロボックル物語シリーズ」が、
国民的文学作品として認知されていないことに、納得がいかない。
このシリーズは、日本初の長編ファンタジー文学にして、
日本のファンタジー文学史上3本の指に入る最高傑作のひとつでしょう。
「借りぐらしのアリエッティ」が、今のところ今年の邦画最高の売上で、-先週(9/5)いっぱいの興収ランキングから-
(洋画も含めるとトイ・ストーリー3がトップ。)
宮崎駿監督作品でなくても、トップを獲るところは、さすがジブリ・ブランドなのだけれども、
ジブリが小人の映画を作るという話は、何年も前からあって、
どうやら佐藤さとるのコロボックル物語をやるようだという噂だったので、
原作がメアリー・ノートンのシリーズになったことは、正直残念だった。すごく残念だった。「借りぐらしのアリエッティ」の評を、さまざまなブログで読んでみても感じるのだが、
僕と同じような気持ちの人は、全国にたくさんいるようだ。メアリー・ノートンのシリーズも決して嫌いではないのだけれど、
結局「人間VS小人族」の敵対的構造から、抜け出せないメアリー・ノートンのシリーズより、
「人間の理解者と小人族との共生」を描いたポジティブな「コロボックル物語シリーズ」のほうが、
もっとずっと共感できるんだよねえ。
(これは、日本人や韓国人や中国人や台湾人やモンゴル人やチベット人の異民族共生にもつながる話でしょう)

借りぐらしのアリエッティ Arrietty’s Song / Cecile Corbel ( セシル・コルベル )

僕がこの「コロボックル物語シリーズ」を初めて読んだのは、

まだ10歳にもならない頃に、親父が買ってきてくれた「星からおちた小さな人」だった。
それは、それまでに体験したこともないような面白さで、
本の中にある別世界に夢中になって、くりかえしこの本を読み、
僕はそれをきっかけに「本の虫」になっていった。それから学校の図書室に行って、
「だれも知らない小さな国」「豆つぶほどの小さな犬」を探したのだが、
当時はすぐには見つからず、
ちょうどこの頃、映画では「メリー・ポピンズ」が封切られていて、
かわりにメリーポピンズの原作や、ドリトル先生や、不思議の国のアリスなどを読んだっけ。

しばらくして推薦図書として学校に「だれも知らない小さな国」が入ってきて、
むさぼるように読んだ。
感動なんてもんじゃなかったなあ。それ以上の魂がふるえるような経験だった。

「せいたかさん」が初めてコロボックルに出会うときの、あの美しくみずみずしい文体は、
日本文学のかけがえのない財産のひとつだと思う。

コロボックル物語は、昭和の頃一度だけ映像化されて、TVアニメになった。それが↑の「冒険コロボックル」

世界を見回すと、
指輪物語、ナルニア国物語、ハリー・ポッターシリーズ-イギリス
はてしない物語(Never Ending Story)-ドイツ
ムーミン・シリーズ-フィンランド
西遊記-中国
オズの魔法使いシリーズ-アメリカ

これらは、みんなその国を代表する国民的ファンタジー文学作品でしょう。
日本にもあるんだよ!って大声で言いたいね。

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