「今の日本の児童文学会は日教組系左翼が牛耳っていて、
ファンタジー文学の先駆者である宮沢賢治や佐藤さとるに対しては、ちょっと不当な評価になってる。」みたいなことを言っていた。本当かどうかは知らないが、気になったのでちょっと調べてみた。
これはメモなので、興味の無い方は読み飛ばしてください。
1.現在、日本の大きな児童文学系団体は2団体
◎最大の組織「日本児童文学者協会」は左翼系1946年~
1952年5月17日児童憲章記念日に日教組児童文学者協会・婦民クラブ等10団体が中心で
「日本子どもを守る会」を結成するなど、
綱領の「民主主義的な児童文学を創造し普及する」に示されているように児童文学運動団体としての性格を持っている。
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声明
を読んでも、左翼イデオロギー丸出しの主張だ。
これに関して『児童読物よ、よみがえれ』からの引用
「ここ数年来、児童文学界は、組織的に極めて政治色濃厚な一党支配状況が確立しつつある。
現在、日本の児童文学系団体で、最大の規模をもつのが、<日本児童文学者協会>である。
いわゆる「民主主義的児童文学の創造と普及」を目的とするこの団体は政治的には、
日本共産党の系列に属する文化団体で、
同じ政党系列に属する<日本子どもを守る会>や、これまた同系列の全国的規模をもつ読書運動団体
<日本子どもの本研究会>などと、密接な連携のもとに、
普及面では確実な成果をあげてきた。かつて<日本子どもの本研究会>の役員が自分たちの団体は「普及面で作家を支え、保証する」と言明したが、
言明どおり確実に達成しつつある。
そのため、児童図書各社の営業部で、これらの組織に加盟している作家であるかどうかは、
その売上げののびや部数でほぼ判断がつくとさえ言われている。
つまり<創造と普及(生産・消費と言い替えてもよい)の一貫性>ということでは、
この組織による政治的支配はほぼ完成したと見て差し支えないであろう。」
◎もうひとつの団体、日本児童文芸家協会はイデオロギーのない職能団体1955年~
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上記の左翼系の日本児童文学者協会のほうがはるかに力がある。
2.「だれも知らない小さな国」佐藤さとるについて
◎『児童文学の境界へ 梨木香歩の世界』 藤本英二
「現代児童文学の出発点をどこにおくか。ほとんどすべての研究者が
一九五九年に発表された佐藤さとるの『だれも知らない小さな国』を、
その出発点の一つにあげている。」
◎【春の叙勲】横浜市の佐藤さとるさん(82)旭日小綬章 児童文学作家
◎「佐藤さとるファンタジー全集」は講談社より復刊されることが決定
◎コロボックル物語」誕生から50年 佐藤さとるさん-毎日新聞
「コロボックル物語」は、異質なものとの共生。
海軍兵だった佐藤さとるの父完一氏に捧げる評伝小説。
3.最近の日本児童文学に関する宮崎駿の見解
こちらからの抜粋
2008/07/28, 日本経済新聞 夕刊
アニメの未来(上)宮崎駿監督に聞く――今につながるロマンを
「最近スタッフが比較的新しい日本の児童文学五十冊の粗筋を書き出したが、
アニメーションにしたいものが一つもなかった。
学校に行かないとか、親が離婚したとか――。
どうして狭いリアリズムの中でうろうろするのか。
自分たちの文化や歴史に根ざし、なおかつ今の生活につながるところでロマンを書けないものかと、
がっかりしました。」
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総合して分析すると、僕の友人の言っていたことは正しいのかもしれない。
日本の児童文学界がリアリズム重視の左翼系イデオロギーに引っ張られて、
名作不当評価の原因や、新しいファンタジー創造の足かせになっているのだったら、
これはかなり問題だ。
ただし、2000年以降
『闇の守り人』上橋菜穂子
『風の陰陽師』三田村信行
のような本格的ファンタジーも生まれてきてはいる。